(この記事は、「子どもたちへの戦争」を引き起こしている大人の強迫観念を明らかにするノボトニー 神父による継続中のシリーズの一部です。)
「どの子どもも一人ひとり種類の違う花だ。みんながそろってこの世界は美しい花園となる」(作者不詳)。この世界にある最も貴重なものの一つが、子どもたちです。神様は、一人ひとりをかけがえのない人間として、オンリーワンの存在としてお創りになりました。はじめに神は「男と女」をお造りになり、「増えよ、地に満ちよ」と言って、ご自分の創造の業に参加することを願われました。その結果、一人ひとりが尊く、「特別な」才能や能力を持ち、世界に生命を与える子どもたちが誕生しました。子どもは、幼少期から青年期に至るまで、人間として成長するために安全な環境を必要とします。その時期は、子どもたちが恐れなく、暴力の不安なく、そして虐待や搾取からも保護されて生きるべき時なのです。子どもたちは世界の未来であり、私たちは他の貴重な資源に対すると同じように、彼らを大切にする必要があります。
しかし、世界の子どもたちの6人に1人は紛争の影響が及ぶ地域に住んでいます。そして、貴重な資源たる子どもたちは、過去20年間のどの時期よりも今、子ども兵士という犠牲になる危険にさらされているのです。シリアから南スーダン、イエメンからコンゴ民主共和国まで、子どもたちは自分たちが引き起こしたのではない暴力に巻き込まれています。彼らは殺され、傷つけられ、レイプされ、他人を殺すための軍勢(ウォーマシン)として利用されているのです。
こうした自らが招いた紛争において、何万人もの子どもたちが武装集団に求められています。彼らは世界中で子ども兵士になるために募集されています。ある者は誘拐され、脅され、強要され、操られて参加させられます。また、貧困にあえぎ、家族のために収入を得ることを余儀なくされる者もいます。また、自分自身が生き残るため、あるいは家族や地域社会を守るために参加する者もいます。どのような理由であれ、これらの子ども兵士は犠牲者なのです。彼らはみな、身体的、知的、感情的な発達に深刻なダメージを受けた痕跡を負っています。
子ども兵士とは何でしょうか? 子ども兵士とは、国家または非国家武装集団によって徴用された18歳未満の子どもたちのことです。「子ども兵士」という言葉は、子どもたち(少年や少女)が軍事紛争で利用される幅広い役割を意味しています。子ども兵士の役割には、武装した戦闘員やスパイ、料理人、ポーター、メッセンジャー、さらには(性的搾取のための)「妻」も含まれます。
国連は、軍事グループによって子どもが兵士として広く使われている14カ国を特定しました。アフガニスタン、コロンビア、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、イラク、マリ、ミャンマー、ナイジェリア、フィリピン、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、イエメンの各国です。
次の2つの例から、子ども兵士となる子どもたちの募集、訓練、教化の様子を垣間見ることができます。
(例1) フレデリックは中央アフリカ共和国のバンバリで学校にいたが、民兵が攻撃してきました。応戦中に兄と母親を含む多くの人が死にました。壊滅的な打撃を受けたフレデリックは保護と愛する者の死への復讐の両方を求めて、武装集団に加わりました。フレデリックの話は衝撃的ですが、残念ながら珍しいことではありません。武力紛争は、何百万人という子どもたちにとって悲惨な現実なのです。
(例2) アフガニスタンのタリバンが、米軍撤退後、子ども兵士の数を増やしたことは周知の事実です。政府を掌握して以来、彼らは処刑を含む報復を行い、ジャーナリスト、活動家、人権擁護者の家を襲撃し、女性や少女の権利を制限し、学校には男子しか通わせないようにしているのです。
タリバン司令官は長い間、マドラサ(イスラム宗教学校)に頼って、子どもたちを兵士として訓練し、育ててきました。6歳の少年が洗脳され、13歳までに銃器の使い方を学ぶことが多いのです。13歳から17歳の子どもがしばしば戦闘に使われています。
さらに、タリバンは、自爆やその他の危険な攻撃を実行するために子どもたちを利用します。多くの場合、金銭やその他のインセンティブの約束や脅しによって、子どもたちを騙して勧誘しています。ある15歳の少年が国連の調査官に語ったところによると、タリバンの司令官がアフガニスタンの警察に対して爆発物を爆発させるよう命じ、任務を遂行すれば楽園に行けて「巨額の報酬」を得られると約束したといいます。少年が抵抗すると、司令官は少年とその両親を殺すと脅しました。
興味深いのは、アフガニスタンでの自爆攻撃は2005年以前は稀でしたが、今ではタリバンをはじめとする反政府武装勢力による戦争戦術として急速に取り入れられるようになっています。2014年以降、タリバン勢力による自爆攻撃によって、約6000人の民間人が犠牲になっています。こうした攻撃の実行には、操りやすく、疑いを持たれにくいという理由から、子どもたちが利用されているのです。
アフガニスタンにおける紛争は、子どもたちにとって、世界で最も死者の多い紛争の一つとなっています。過去20年間に約3万3000人の子どもたちが死亡または重傷を負ったと推定されています。特に子ども兵士の数が多いようです。例えば、ヒューマン・ライツ・ウォッチが複数の家族から話を聞いたところによると、2015年のクンドゥズにおける軍事攻勢では、まだ14歳、15歳の子どもたちがタリバンに勧誘され、わずか数週間で戦闘に参加させられて死亡したという。
タリバンは、「ジハード活動」に子どもは使っておらず、彼らの行動規範には「ひげのない少年」は軍事センターに入れないと記されていると主張しています。それにもかかわらず、国連は、2020年の急増を含め、近年タリバンが子どもを勧誘し利用した個別事例を数百件検証し、実際の数字はもっと高い可能性があることを確認しています。
子ども兵士に関するカトリックの社会的教説
(A)人間の生命と尊厳
「カトリック教会は、人間の生命は神聖であり、人間の尊厳は社会の道徳的展望の基盤であると宣言しています。この信念は、私たちの社会的教えのすべての原則の基礎となるものです。私たちの社会では、人間のいのちは中絶と安楽死から直接的な攻撃を受けています。人間の生命の価値は、クローニング、胚性幹細胞研究、死刑制度によって脅かされています。戦争やテロ攻撃で意図的に一般市民を標的にすることは常に間違っています。カトリックの教えは、戦争を回避するための努力も呼びかけています。国家は、紛争を予防し、平和的手段で解決するために、より効果的な方法を見つけることによって、生命に対する権利を保護しなければなりません。私たちは、すべての人が尊い、人は物よりも大切である、また、すべての制度の尺度は、それが人間の生命と尊厳を脅かすものか、あるいは高めるものかであると信じています。」
出典:http://www.usccb.org/beliefs-and-teachings/what-we-believe/catholic-social-teaching/seven-themes-of-catholic-social-teaching.cfm
米国カトリック司教協議会. ワシントンD.C.
カトリック教会のすべての著作と教えは、一人ひとりが神の似姿として創造されたことを明確に述べています。したがって、人間の生命がその始まりから終わりまで守られるようにすることは、すべての社会の責任です。子ども兵士の状況を見ると、人間の生命の保護と尊厳が完全に放棄され、生命に対する権利が奪われているのです。カトリック教会は、すべての人が神の尊い贈り物であると信じ、ウォーマシンとして使用するために子どもたちを入隊させることを強く非難しています。
(B)Hidden Displacement: Child Soldiers (強制移動の裏で :子ども兵士)
(C)The hidden work of the Catholic Church with thousands of “child soldiers” (何千人もの「子ども兵士」に関わるカトリック教会の隠れた活動)
(D)Catechism of the Catholic Church (カトリック教会のカテキズム)
聖書は、「子どもは神からの贈り物」と教えています。
神は家族を創造され、子どもは神からの贈り物です。実際、聖書には「子孫は神からの報酬だ!」と書かれています。このことから、神は子どもがどのように育てられ、養われるかを気にかけておられます。
神の子どもに対する愛を示す30以上の聖書箇所を踏まえて、大人は、マルコによる福音書10:13-16を多くの子ども兵士たちにどう説明するのでしょうか?
イエズスに触れてもらおうとして人々は幼い子を連れて来たが、弟子たちはその人々をしかった。それを見てイエズスはいかられ、「子どもたちを私のとこに来させよ。とめてはならぬ。神の国を受け入れるのはこのような者たちである。まことに私は言う。子どものように神の国を受け入れぬとそこには入れぬ」と言われ、彼らを抱き、手を置いて祝福された。(マルコによる福音書10:13-16)
まとめ
幼少期の子ども兵士は、生命に対する権利、性的暴力やその他の拷問を受けない権利、教育を受ける権利、思想や宗教の自由に対する権利など、幅広い人権侵害や虐待を受けることを強いられ、徴集されているのです。これは、子どもたちの基本的人権に対する重大な侵害であるだけでなく、多数の罪のない子どもたちの幼年期を終わらせる酷い悲劇を意味するものです。これらの尊い子どもたちは、大人の世界からもっともっと良いものを受ける資格があるのです。
追加情報 子どもの権利に関する条約
英語原文投稿 2022年1月31日
翻訳日 2022年 8月22日
翻訳者 西野 翠 / 大岡 滋子